株式会社レック研究所

気を付けたい リフォームや住宅改修におけるトラブル
安楽玲子

初出:環境新聞社「シルバー新報」2010年10月8日号
(表題のみ変更)
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介護保険には、上限20万円(自己負担1割)で利用出来る「住宅改修」がそのメニューにあり、福祉用具のレンタルや購入と併せて、住環境を改善出来るようになった。
当初は、バリアフリー化に関する知識も普及しておらず、対応する商品も豊富とは言えない状況だった。500万円以下の建築工事は、登録制度などがなく、だれでも参入出来たことから、新たなビジネスチャンスとばかりに様々な業種が参入した。このため、住宅改修の現場では、建築知識のない人だけで改修案が検討されることも珍しくはなかった。中には、複数居室や廊下などの床レベルを揃えるのに、床を傾斜して張ればよいなどと、笑い話のような案まで提案される始末だった。
その後の制度見直しで、2006年4月から、「住宅改修」の手続きに図面の提出が義務づけられ、事前申請となり、当初の混乱は幾分か落ち着く傾向にあった。

ところが、最近になって再び混乱が起きている。一つは、住宅改修にかかわるケアマネジャー、プランナーの知識不足、さらに、近頃の厳しい社会状況の中、介護がこれからの成長産業といわれ、有力なリフォーム市場として、新たな参入者もみられはじめていることが原因と考えられる。
現場では、困難事例や重度化したお年寄りの在宅に向けた数百万円規模の住宅改修が増え、より高度な専門知識が求められるようになってきていることも背景にあるだろう。

「住宅改修」に必須の理由書作成は主にケアマネジャーが行うことから、工事は普段からかかわりの深い、福祉系事業者などにより行われることも多い。こうした事業者では、改修現場にかかわる営業担当は、建築の専門知識を充分に有していない、「福祉住環境コーディネーター2級」といった民間の資格保持者がいる程度のところも多いが、ケアマネも提案内容を精査し、修正を求めることはほとんどない。
例えば、車いす使用者のマンションの床の張替えに際し、遮音性を考慮した「防音○級」の床材を高さ調整を行った上で、直接床に貼る。こうした方法は防音性能を低下させ、結果として廊下より玄関が高くなるので出来ないと主張する(性能は低下せず問題はないのだが)。
使用が危険であったり、不可能といえる階段昇降機を提案する、住宅改修を手がける福祉用具取り扱い事業者などの話も耳にする。
「住宅改修」は、築年数にかかわらず、対象者宅を工事するため、戸建やマンションなど、年代別に特徴のある構造や仕様、設備機器の基本知識が不可欠である。残念ながら、この基本知識が欠落していることで、問題のある提案を行う結果となっている例は少なくない。

「住宅改修」の内容が合点がいかない時や、高額な工事と判断される場合、「合い見積もり」として、別業者に依頼することがある。ケアマネは、2つの事業者に同時の立ち会いを求める事例も見られるが、建築の常識では考えられない。一つの見積もりを踏まえ新たな業者に検討してもらい、見積もりを取る。おおよそこうした段取りで、適切な改修工事を行うことが出来る。やみくもな「合い見積もり」の依頼は、事業者にとって大きな負担につながることにも留意し、「住宅改修」を進めて欲しいものである。

こうしたご時世から、施工事業者の中にいわゆる「悪徳業者」もいるので要注意である。特徴的なのは、「その日のうちに契約を結ばされる」ことである。価格が高いといったこともあるが、施工に問題を引き起こすこともある。

適切な「住宅改修」や福祉用具の利用は、在宅を続ける人にとって、大きな効果をもたらす。なにしろ、いままで自分ででき出来なかった歩行、排泄、入浴などが出来るようになったり、介助が楽に出来るようになったりする。
介護の質の70%は住まいで決まるといわれている。 より良いケアに向け、今後「住宅改修」にかかわる福祉系事業者は改めて建築の基礎知識を学んで欲しい。比較的規模の大きな改修に関わることの多い建築系事業者は、介護に関する基礎知識として、要介護者の心身状況の理解を深める、福祉用具の活用を体得するなど、一層のスキルアップを期待したい。

 



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